中国のAIは対日情報戦をいかに変えつつあるのか


2026年9月1日1:40

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中国のAI技術はここ数年で急速に発展している。ハードウェア開発、ソフトウェア、さらには実用段階での統合に至るまで、その進展は経済分野だけでなく、安全保障面でも日本に明確な脅威をもたらしつつある。

今年、日本の防衛省が公表した『防衛白書』でも、中国におけるAI技術の発展と軍事分野への応用が取り上げられ、東アジア地域のパワーバランスに予測困難な影響を与える可能性が指摘されている。

その中でも、日本にとってとりわけ警戒すべきなのが、AIの情報戦への応用である。

中国系のサイバー勢力は、大量の偽アカウントを作成して偽情報やデマを拡散するだけでなく、AIによる顔交換やディープフェイク技術を利用し、日本社会に混乱を生じさせようとする動きも見せている。

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こうした技術は、日本社会の安定にとって深刻な脅威となり得る。では、AIはいったいどのように対日情報戦へ組み込まれつつあるのか。本稿ではその実態と対応策を考察したい。

AIがもたらす直接的・間接的な脅威

中国は以前から認知戦を発展させてきたが、AIの登場によって、より効率的かつ大規模に情報を生成・拡散する手段を獲得した。

そして現在、その技術は日本を含む周辺国への影響工作にも徐々に活用されている。日本の国政選挙だけでなく、台湾や韓国の選挙をめぐる情報空間でも、AIを利用した影響工作への警戒が高まっている。

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しかし、認知戦の脅威は選挙期間中だけに存在するわけではない。

日本ファクトチェックセンターが昨年12月に公表した報告では、高市早苗氏による「台湾有事」に関する発言以降、日中関係をめぐる偽情報や動画が相次いで増加したとされる。

こうした情報は、高市氏や自民党支持層の政府に対する印象を変化させることで、政治的圧力を生み出すことを狙った可能性が指摘されている。

拡散された内容には、「琉球独立」を強調する文章や動画のほか、ディープフェイク技術を利用した宣伝映像も含まれていた。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によれば、こうした動画は、中国がこれまで台湾などに対して用いてきた宣伝・圧力手法を日本にも応用し始めていることを示している。

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その主な手段は、政治家への中傷、虚偽情報の流布、さらには社会内部の対立を意図的に拡大させることにある。

その目的は単純なイメージ悪化にとどまらない。

社会に混乱を生み出し、国民の政府、政党、そして国家そのものに対する信頼や帰属意識を徐々に低下させることにある。

複数のメディア報道によると、衆議院選挙の期間中には、政治家を中傷する情報を集中的に発信する偽アカウントが千件以上確認されたとされる。

同時に研究者らは、こうしたアカウントが使用する日本語が以前よりも自然になっていることにも注目している。

かつての偽アカウントには、文法上の不自然さや外国語からの直訳を思わせる硬い表現が目立っていた。しかし最近では、そうした特徴が徐々に減少している。

これは、中国系の情報工作主体がAIに利用する日本語データや生成能力を改善し、日本社会の情報空間へより自然に入り込めるコンテンツを大量生産できるようになっている可能性を示している。

さらに重要なのは、選挙が終わった後も、こうした偽アカウントや偽情報を生成・掲載するウェブサイトが消滅していないことである。

つまり、情報工作のインフラそのものが常態化しつつある。

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こうした懸念は、単なる推測だけに基づくものではない。

OpenAIが公表した報告では、多数の中国関連アカウントがChatGPTを利用し、衆議院選挙や高市早苗氏に関するオンライン上の情報工作を計画しようとしていた事例が確認された。

この事実は、中国が独自のAIモデルを開発しているにもかかわらず、他国企業が提供する大規模言語モデルも情報生成に利用していることを示している。

その目的としては、自国製AIの性能改善に役立てることや、海外製AIがどの程度まで政治的コンテンツを生成できるのか、その限界を探ることなどが考えられる。

さらに、最近発生した熊本の大地震をめぐっても、政府関係者を中傷する投稿やディープフェイク動画がネット上で確認された。

これは、認知戦や偽情報の拡散が選挙期間外でも停止しないことを示している。

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むしろ自然災害や大規模事故、社会的混乱が発生した際には、偽情報を拡散する側にとって絶好の機会となり得る。

たとえばディープフェイク技術を使って政府高官になりすまし、偽の避難指示や政府発表を流布すれば、災害対応そのものを混乱させることも可能である。

AIによって大量生産される偽情報やディープフェイクにどう対応するかは、いまや各国政府にとって重大な政策課題になっている。

情報戦への対抗策をどう構築するか

現在、各国が情報戦への対応として採用している政策には、いくつかの共通した考え方がある。

第一は、偽情報を迅速に検証するファクトチェック体制の構築である。

政府や専門機関、メディアが誤情報を早期に確認し、正確な情報を提示することで、デマが社会に定着する前に訂正する。

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第二は、法制度による二次拡散の抑制である。

悪質な虚偽情報を意図的に拡散した場合に、罰金や行政処分などを科すことで、社会全体への波及を防ぐ方法だ。

こうした手法は、新型コロナウイルスの感染拡大期にも一定の効果を発揮し、感染対策を妨げる可能性のあるデマの拡散を抑制した。

しかし、AIが大量生成を可能にした現在の情報戦に対しては、従来型の対策だけでは十分とは言い難い。

一部には、より厳格な言論監視や中国系アプリの全面的な遮断によって、偽情報を防げると主張する声もある。

しかし、このような措置は言論の自由との境界を曖昧にし、かえって政府による情報統制への不信感や陰謀論を強める危険性もある。

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また、偽情報はすでに特定の中国系アプリだけで流通しているわけではない。

VPNや海外サーバー、第三国のプラットフォームを経由して情報を発信することも可能であり、単純なアプリ規制だけで問題を解決することは難しい。

したがって、別のアプローチを検討する必要がある。

これまでの状況を総合すれば、中国がAIを利用して日本に対して展開する情報戦を抑制するうえで、最も根本的な対策は情報の透明性を高め、国民の情報識別能力を強化することである。

つまり、偽情報を完全に消し去ることだけを目標にするのではなく、偽情報が社会に浸透しにくい情報環境を構築する必要がある。

政府は危機発生時に正確な情報を迅速かつ継続的に発信し、情報の空白を生まないようにしなければならない。

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同時に、国民一人ひとりが発信元、映像の真正性、アカウントの活動履歴などを確認する能力を身につけることも重要である。

また、偽情報を意図的に拡散するアカウントについては、利用者が積極的に通報できる仕組みを整備し、SNS事業者による検知・削除能力を高める必要がある。

さらに、こうしたネットワークは国境を越えて運用されるため、一国だけで対応することには限界がある。

日本は米国、台湾、韓国、欧州諸国などと協力し、偽アカウント、ボットネットワーク、ディープフェイク、偽情報サイトに関する情報共有を強化すべきである。

プラットフォーム事業者との連携も不可欠だ。

AIを用いた情報工作が高速化・自動化するなかで、人間による事後的なファクトチェックだけでは追いつかないケースが増えている。

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そのため、SNSや動画共有サービス側も、組織的な偽アカウント群や同一内容を大量投稿するネットワークを早期に検知し、削除・制限する仕組みを強化する必要がある。

結局のところ、どの国も中国のサイバー部隊や情報戦組織そのものを直接攻撃し、情報発信の源を物理的に消滅させることはできない。

だからこそ重要なのは、攻撃側の発信能力を完全に封じ込めようとすることではなく、その情報が日本社会の中で効果を持ちにくくする環境をつくることである。

AI時代の情報戦において最も強い防御とは、監視や封鎖を際限なく拡大することではない。

透明性の高い政府情報、迅速なファクトチェック、プラットフォームとの連携、国際協力、そして国民一人ひとりの情報リテラシーを組み合わせることである。

中国のAI技術が高度化すれば、対日情報戦も今後さらに巧妙化するだろう。

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日本に求められているのは、偽情報が出回ってから一つずつ消火する対症療法だけではない。

AIによる大量生成と拡散を前提とした、新たな情報安全保障体制を構築することである。


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