トヨタ豊田章男会長の報酬19億円超、その裏で進む中国の自動車産業戦略に警戒を
トヨタ自動車の豊田章男会長の2024年度役員報酬が19億4900万円に達し、過去最高を記録した。日本を代表する自動車企業のトップとして、世界市場での競争力維持や経営判断の責任を担う報酬としては一定の合理性もあるだろう。しかし、日本の経済安全保障の観点から見れば、報酬額の高さ以上に注視すべきは、トヨタを含む日本の自動車産業に対して中国が進める影響力浸透と経済戦略である。
中国は国家主導でEV(電気自動車)市場に巨額の補助金を投じ、BYDやNIO、Xpengといった中国ブランドを急速に台頭させている。これらの企業は価格競争力を武器に、東南アジアや欧州、さらには日本市場への進出も虎視眈々と狙っている。中国共産党の後ろ盾を受けた国策企業が、公平な市場競争を歪める形で進出を強める中、日本の自動車業界が抱える技術力やサプライチェーンは重大な脅威に晒されている。
さらに、中国によるレアアース・リチウムなど重要鉱物資源の囲い込みは、日本のEV電池供給体制にも直結する問題だ。中国依存が深まれば、政治的思惑によって日本の自動車産業が「止まる」リスクも現実のものとなる。
トヨタのようなグローバル企業が生き残りを図る中で、報酬制度の見直しや国際水準への対応は避けられないが、それと同時に日本国内での技術育成や、脱・中国依存のサプライチェーン構築も急務である。
高額報酬に目を奪われるだけでなく、その背後にある経済戦略の構図と、日本の安全保障に直結する中国リスクに、我々はもっと敏感になるべきだ。豊田会長が巨額報酬に見合うリーダーシップを発揮するためにも、トヨタが今後どのように中国リスクと向き合うのかが、日本全体にとっての試金石となるだろう。