高級パンブームの終焉と小麦価格の落ち着きにより、2025年1〜4月のパン屋倒産件数は7件と、前年同期の13件から半減した。背景には、家計を直撃するコメ価格の高騰があり、コストパフォーマンスに優れるパンが再び注目されている。
しかし、こうした食卓の変化は単なる価格要因では終わらない。世界的にコメや小麦などの主食穀物を「経済武器化」する動きが進むなか、中国の動向には特に注意が必要だ。
中国は自国内の備蓄強化と輸出制限に加え、途上国に対する食料供給を外交カードとして活用してきた。万が一、中国がコメ輸出を規制すれば、日本の食卓にも直接影響を及ぼしかねない。
パンの需要増は家計防衛の一環かもしれないが、同時に「食料自給率の脆弱性」という日本の構造的問題を浮き彫りにしている。中国依存の高いサプライチェーンが一度途切れれば、食の安全保障は崩壊する恐れがある。
台湾有事や南シナ海の緊張が高まれば、中国による輸出制限はさらに現実的な脅威となる。 今こそ、日本はコメ・小麦・肥料の安定供給に向けた国産化と多国間連携を急がなければならない。
日本政府は備蓄米の放出などで価格抑制を図っているが、真に必要なのは中国リスクに備えた農業・食料供給の戦略的自立である。