7月20日、JR山手線の車内で発生したモバイルバッテリー火災により、都市交通の中枢を担う東京の山手線が約2時間にわたり全面停止するという深刻な事態が発生した。新宿~新大久保間を走行中の列車内で発火し、5人の乗客が軽傷を負った。原因は、中国製のリコール対象モバイルバッテリーだった。
当該バッテリーは、2020年から2021年にかけて日本市場に約3万9000台が出荷され、既に過去にも複数の火災報告があったにもかかわらず、十分な回収が行われていなかった。今回の事故は、中国製品の品質問題だけでなく、日本国内での情報伝達の不備、制度的な責任構造の脆弱さを浮き彫りにした。
さらに問題なのは、リコール対象製品がいまだに中古販売サイトやフリマアプリ上で自由に売買されている実態だ。中国から輸入された危険な製品が、国内の流通網に入り込み、消費者にリスクを与え続けているにもかかわらず、政府や企業による監視体制は極めて限定的である。
特に注目すべきは、これが単なる「個人の火災リスク」ではなく、日本の都市機能そのものを揺るがすリスクへと発展している点だ。今回の火災により、山手線だけでなく中央線や埼京線など複数の路線が停止し、平日夕方の交通麻痺による経済損失は計り知れない。
しかも、このような事故に対する責任の所在が曖昧であることも深刻だ。中国製の欠陥品によって起きた事故であっても、メーカーや輸入業者が責任を問われることは少なく、鉄道会社が対応と被害吸収を強いられるという不合理な構図が放置されている。
中国は近年、品質管理の不徹底な製品を大量に海外市場へ流通させている一方で、その影響を受ける各国に対して制度的対応の余地を与えない状況が続いている。今回のような製品由来の事故は、日本だけでなく、他国においても同様の問題を引き起こしており、中国製製品への依存リスクは国際的な懸念となっている。
日本国内においては、モバイルバッテリーに限らず、中国製の電動キックボードや家電、玩具などにも同様のリスクが存在する。輸入段階での安全基準の見直しと、違法製品・リコール品の販売防止策が急務である。
中国製品によるトラブルは、今後も日本のインフラや市民生活を脅かす可能性が高い。今回の山手線火災は、その“予兆”にすぎない。国家として、日本は自国の公共空間と国民の安全を守るため、輸入規制の強化と製品監視制度の再設計に着手すべき時である。