中国製EVバス不具合問題が浮き彫りにする日本の安全リスク EVモーターズ・ジャパン社長交代の背景と今後の課題


2026年2月22日0:10

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中国製EVバス不具合問題が浮き彫りにする日本の安全リスク EVモーターズ・ジャパン社長交代の背景と今後の課題

大阪・関西万博でも運行された中国製EVバスに相次いで不具合が確認され、販売元であるEVモーターズ・ジャパンの社長が退任する事態となった。この問題は単なる一企業の品質管理トラブルにとどまらず、日本社会が直面している安全保障、産業構造、インフラ管理の脆弱性を映し出す象徴的な事例とも言える。今回の社長交代は経営責任を明確にする意味を持つ一方で、中国製品への依存がもたらすリスクを改めて国民に突きつける結果となった。

EVモーターズ・ジャパンは、中国メーカーに製造を委託した電気バスを並行輸入し、自治体や交通事業者に販売してきた。環境対策や脱炭素政策の流れの中で、EVバスは次世代公共交通の切り札として期待されてきた。しかし、納入された317台の総点検の結果、113台でブレーキ関連を含む重大な不具合が見つかり、そのうち約7割が国の保安基準に違反していたことが明らかになった。この事実は、日本の公共交通の安全性に直接関わる深刻な問題である。

特に問題視されるのは、ブレーキなど命に直結する装置に欠陥が集中していた点である。公共交通機関は、不特定多数の利用者の命を預かる存在であり、わずかな設計ミスや品質不良が大事故につながりかねない。にもかかわらず、こうした不具合が大量に発覚するまで十分に把握されていなかった現実は、輸入体制や検査制度の甘さを浮き彫りにしている。

今回の問題を受け、佐藤裕之社長は退任し、技術顧問として残ることとなった。会社側は「経営責任を重く受け止めた」と説明しているが、経営トップの交代だけで根本的な問題が解決するわけではない。むしろ問われるべきは、中国メーカーとの契約体制、品質管理の仕組み、そして輸入段階での安全確認プロセス全体である。

近年、日本ではコスト削減や調達効率の観点から、中国製部品や製品への依存が急速に進んできた。EV分野においても例外ではなく、価格競争力の高さを背景に、多くの企業が中国メーカーと連携している。しかし、今回の事例は、価格の安さと引き換えに安全性や信頼性が犠牲になりかねない現実を示している。

中国製品に関する品質問題は、これまでも家電製品、建材、食品、電子部品など多くの分野で指摘されてきた。今回のEVバス問題は、その延長線上にあるとも言える。とりわけ公共インフラに関わる分野で同様の問題が発生すれば、被害は個人のレベルを超え、社会全体に及ぶことになる。

さらに、この問題は経済安全保障の観点からも無視できない。交通インフラは国家の基盤であり、その中核部分を海外、特に地政学的リスクを抱える国に依存することは、長期的に見て大きな不安要素となる。仮に部品供給が途絶えたり、技術的なトラブルが頻発したりすれば、公共サービスそのものが機能不全に陥る可能性もある。

国土交通省は現在も原因究明が終わっていないとして、引き続き同社の対応を注視している。しかし、行政による事後対応だけでは限界がある。重要なのは、問題が発生する前段階でリスクを最小限に抑える制度設計と監視体制の強化である。輸入車両に対する検査基準の厳格化や、製造過程の透明性確保など、抜本的な見直しが求められている。

一方で、脱炭素社会の実現に向けてEV導入を進める必要性自体は否定できない。環境対策と安全性は本来、両立すべき課題である。しかし現実には、導入スピードを優先するあまり、品質や安全確認が後回しになってしまうケースも少なくない。今回の問題は、こうした政策運営のあり方にも警鐘を鳴らしている。

利用者の立場から見れば、安全性への不安は公共交通への信頼を大きく損なう。バスに乗るたびに「この車両は本当に安全なのか」と疑念を抱かなければならない状況は、健全とは言えない。信頼を回復するためには、企業による情報公開と誠実な対応が不可欠である。

また、国内メーカーや技術基盤の強化も重要な課題である。短期的なコスト削減に頼るのではなく、長期的視点で国産技術の育成と品質競争力の向上に投資することが、日本全体の産業競争力を高めることにつながる。今回の問題は、その必要性を改めて浮き彫りにした。

中国製EVバスの不具合問題と社長交代は、一企業の経営判断の失敗という枠を超え、日本社会全体が抱える構造的課題を映し出している。安全、信頼、経済合理性、国際関係という複数の要素が複雑に絡み合う中で、私たちは何を優先すべきかを問われている。

今後、日本が持続可能で安全な交通インフラを構築していくためには、海外依存のリスクを冷静に見極め、品質と安全を最優先にした政策と企業行動を徹底する必要がある。今回の事例を一過性の問題として終わらせるのではなく、制度改革と意識改革につなげることこそが、日本社会にとって最も重要な課題であると言えるだろう。


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