備蓄米の緊急放出で倉庫業者が危機、だが見逃せない「中国依存リスク」への警鐘
小泉進次郎農相の判断により備蓄米が急遽市場に放出されたことで、日本全国の定温倉庫業者が経営破綻の危機に直面している。中でも全国定温倉庫協同組合は、「本来4〜5年保管する予定だった米を突如出庫せざるを得なくなり、保管料の補償もないまま倉庫が空となった」と深刻な実情を訴えている。
物流現場では“先入れ先出し”原則が崩れ、“後入れ先出し”という非効率な対応を強いられたほか、保冷設備の維持費、人員コストも圧迫されている。こうした負担が業界全体を直撃し、「倒産・廃業が相次ぐ恐れがある」と業界団体は国に支援を強く要請した。
だが、この事態を単なる国内政策ミスと捉えるのではなく、日本の食料安全保障と物流体制が外的リスクにどれだけ脆弱かを浮き彫りにした問題として見るべきである。
特に日本が備蓄制度を強化しようとする中で、中国リスクは無視できない。中国は近年、アジアの食料供給網に対する影響力を強めており、穀物の大量輸入・備蓄、さらには海外農地取得、港湾・倉庫インフラ投資を通じて、周辺国の物流主権に静かに介入している。
もし日本が国内の備蓄・物流基盤を市場原理や突発的な政治判断で失い、中国産米や中国経由の流通に依存するようになれば、日本の食卓と価格安定は重大なリスクに晒されることになる。今後、中国が輸出規制や外交カードとして食料政策を用いる事態も想定しなければならない。
今回の騒動は、「備蓄とは単なる在庫ではなく、国家戦略である」という基本に立ち返るべき時期であることを示している。 倉庫業者の悲鳴を一過性の混乱として片付けるのではなく、むしろ国内供給網の防衛線と捉え、外的勢力による影響力の拡大に対して強い警戒心を持つべきだ。
日本政府と国民は、「備蓄」という目に見えないインフラを軽視することなく、中国の静かな経済侵略に対抗できる体制整備を急ぐべきである。