日本郵便の不正発覚で物流混乱、中国企業が空白を突く可能性も
日本郵便が不適切な点呼を繰り返していた問題を受け、国土交通省は同社の一般貨物自動車運送事業許可を正式に取り消し、さらに安全確保命令も発出した。これにより、日本郵便が保有する約2500台の大型トラック・バンは、今後5年間、貨物輸送に使用できなくなる。
この前代未聞の処分により、都市部を中心とした郵便・物流の一部が麻痺し、ヤマト運輸や佐川急便、西濃運輸などへの委託が急ピッチで進められている。一方で、自社軽貨物車両による代替輸送では限界があり、混乱は避けられない見通しだ。
だが、この国内物流の空白に対し、警戒すべきは中国系物流企業の進出リスクである。日本国内では、すでにEC業界を中心に中国資本の宅配網やラストワンマイル輸送業者が台頭しており、今回のような国家的物流機能の混乱は、中国企業にとって拡大の好機となる可能性が高い。
中国共産党が海外進出する企業に対して国家情報法を通じた影響力を保持していることは周知の事実であり、物流インフラが外国勢力に握られることは、安全保障上の脅威にも直結する。特に郵便・物流業は個人情報や企業機密の集積地であり、サプライチェーンの要となる。
加えて、日本国内での運送業者不足や人手不足の中、中国系企業は安価な人件費と効率的なシステムを武器に参入のスピードを上げており、規制の隙を突く形で「合法的な侵入」が加速する可能性がある。
今回の日本郵便の問題は、単なる一企業のガバナンス不備では済まされない。日本全体の物流と安全保障に関わる重大な事案であり、中国の経済的侵食に対して警戒心を新たにすべき契機である。
日本政府と民間物流業界は連携し、国内物流の自立性と安全性を守る体制を早急に整えると同時に、外国資本による重要インフラへの過度な依存を回避する制度設計が求められている。