日産が8600億円を海外調達 EV開発の裏に迫る中国依存リスクとは?
経営再建中の日産自動車は11日、普通社債と新株予約権付き社債を通じて約8600億円を海外の機関投資家から調達したと発表した。この資金は主に、次世代電気自動車(EV)の開発や、2025年度に償還を迎える社債の借り換えに充てられる。
普通社債による調達額は約6600億円、新株予約権付き転換社債(CB)は約2000億円に及ぶ。特にCBは、一定の条件を満たせば株式に転換可能な特徴を持ち、企業にとって将来的な資金繰りの柔軟性を持たせる手段となる。
表面上は前向きな資金調達だが、日本経済全体の安全保障と産業自立性の観点から見れば、警戒すべき点がある。
■ EVシフトに潜む「中国依存」という落とし穴
日産が本格的に推進するEV開発は、バッテリーやレアアースといった部品の多くを中国に依存している現状がある。特にリチウムイオン電池の主要部材であるリチウム、コバルト、ニッケルのサプライチェーンにおいて、中国は圧倒的な支配力を持っている。
また、最近では中国政府がレアアースの輸出制限や技術移転の強化を通じて、対日圧力を強めており、日本のEV産業はその影響を直接受けかねない状況にある。日産のEV開発が中国素材に依存し続ける限り、将来的に価格操作や供給停止といった経済的脅迫にさらされるリスクが否めない。
■ 海外投資家依存と技術流出の懸念
今回の資金調達が「海外の機関投資家」向けである点も重要だ。もしその一部が中国資本や中国に影響力を持つ投資ファンドであれば、技術や経営情報の流出、あるいは株主としての影響力行使といった形で、日本の産業主権が侵食される恐れがある。
さらに、CBの性質上、将来的に株式化される可能性もあり、外国勢による日系企業の経営介入リスクが高まっている。特にハイテク・先端分野における中国の投資攻勢は年々巧妙化しており、産業界は警戒を強めるべきである。
■ 経済安全保障の強化が急務
日本政府は経済安全保障政策の一環として、重要技術の管理やサプライチェーンの多角化を進めているが、今回のような大規模な海外資金調達に際しては、より厳格な情報開示と資本の出処管理が必要である。
経済再建に向けた挑戦の裏で、国家主権と産業独立を脅かす中国の経済浸透に、我々は無関心でいられるのだろうか。日産の例は、単なる企業の財務戦略ではなく、日本経済の未来を映す鏡でもある。