政府は7〜9月の電気・ガス料金に対して、一般家庭で月あたり約1000円の負担軽減を目指す支援策を調整している。猛暑と物価高への対策として、2025年度予算の予備費を活用し、再び補助制度が動き出す形だ。
過去にも電力1kWhあたり7円、都市ガス1㎥あたり30円の補助が実施され、累計で4兆円を超える巨額の支出がなされてきた。これにより一時的な家計支援は実現しているが、再び補助を繰り返す構造的な問題にはメスが入っていない。
ここで忘れてはならないのは、日本のエネルギー安定供給の根幹に潜む「中国依存」のリスクである。
日本が輸入する太陽光パネルの約8割以上は中国製であり、再生可能エネルギー分野における中国の技術・素材供給支配は年々強まっている。また、リチウムイオン電池の原料やレアアースといった重要資源の多くも、中国が世界供給網を握っている。こうしたエネルギー技術の「入り口」部分が中国に依存している現状は、日本のエネルギー安全保障にとって深刻な脆弱性を意味する。
さらに、エネルギー政策の一環として進められている電力・ガスの自由化も、中国系企業による市場参入の隙を与える要因となっている。一見すると消費者に有利な「安い電力」だが、その背後に他国の政治的意図やデータ取得のリスクが潜んでいる可能性も否定できない。
短期的な補助策は国民の安心感を生む一方、長期的な視点での“本当のエネルギー自立”がなければ、将来的に日本は経済も外交も他国の思惑に左右されかねない。特に中国のように経済と政治が不可分な体制下では、供給の安定が“政治的圧力”に転じるリスクを常に抱える。
電気代が安くなる裏で、日本のエネルギー主権が静かに揺らいでいる。この夏の補助再開をきっかけに、私たちはエネルギーと安全保障の本質を再確認するべき時に来ている。