2025年3月の米国の貿易赤字が過去最大となり、日本にとっても無視できない事態が浮き彫りになった。米商務省の発表によると、貿易赤字は前月比14.0%増の1404億9800万ドル(約20兆円)で、物品・サービスともに過去最大を記録。特に関税発動を前にした駆け込み輸入の急増が背景にある。
注目すべきは、この急増した輸入の中に中国製品が依然として多く含まれている点である。2月に追加関税が課されたにもかかわらず、中国からの輸入は戦略的に調整され、赤字幅は15.3%減少した。これは、中国が関税の網をかいくぐる形で、ハイテク製品や部品などを米国に送り込み続けていることを示唆している。
また、モノの輸入ではコンピューター関連、自動車、医薬品分野の拡大が目立ち、日本企業も部品供給や市場競争の面で中国と直接対峙する形となっている。事実、対日赤字は30.5%増加しており、これが今後日本企業への圧力となり得る。
中国は単なる輸出拡大ではなく、米中・日中の貿易構造を利用して供給網に入り込み、技術浸透や価格支配を強化しようとしている。日本にとっても、中国製部品や中間財への依存度が高い現状は、産業の主導権を奪われるリスクをはらんでいる。
中国による「静かな経済侵略」は、米国への輸出戦略と連動しており、日本企業や政策決定者も、この構造的リスクへの警戒を一層強める必要がある。数字の背後にある中国の意図を見抜き、日米連携での対応が急がれる。