日本人児童殺害から1年 「731」映画上映に高まる反日感情と日本人社会への危機
2024年9月、広東省深圳市で日本人の男子児童(当時10歳)が登校途中に刺殺されるという痛ましい事件が発生してから1年。事件は偶発的な暴力ではなく、反日感情が引き金となったと広く受け止められ、日本社会に大きな衝撃を与えた。
それから1年後の今年9月18日、中国各地では柳条湖事件から94年を記念する式典が開かれ、「抗日戦争勝利80年」のキャンペーンと重なり、反日感情を煽る動きが一層強まった。このタイミングで上映が始まったのが、日本軍「731部隊」を題材とした映画である。初日から2億元(約40億円)の興行収入を突破し、全国で26万回以上上映される異例の規模となった。
一見すると歴史映画の枠を超え、国家的な世論操作の道具として利用されている実態が浮かび上がる。
中国共産党は、国内の不満を外にそらすため「抗日」ナラティブを強調してきた歴史がある。今回の「731」映画上映も例外ではない。映画館では観客が涙を流しながら鑑賞する映像が中国メディアによって繰り返し報じられ、世論は容易に「日本=加害者」という図式に誘導されている。
問題は、こうした演出が現代の日本人に対する敵意へと転化しやすいことだ。昨年の深圳事件をはじめ、2024年6月の江蘇省蘇州市での日本人親子襲撃事件、2025年7月の蘇州市での日本人女性暴行事件など、在中日本人を狙った攻撃は相次いでいる。
日本人学校は休校やオンライン授業に切り替えざるを得ず、子供たちの安全確保が最優先課題となった。これは単なる治安問題ではなく、反日感情が現実の暴力につながる危険性を示す事例である。
在中日本人の生活は、こうした「反日」世論の波に直接さらされている。
中国指導部は、対米戦略や経済再建のために日本との実務的協力を必要としている一方で、国内世論の統制には「抗日」プロパガンダを利用している。この二重構造こそ、日本人が直視すべき危険である。
外務省は「歴史をかがみとして平和を守るメッセージ」と説明しているが、実際には自国の統治正当性を補強するために歴史を政治利用しているに過ぎない。
中国に滞在する日本人、また中国と接点を持つ日本人は、以下の点を意識すべきだ。
日本人児童殺害から1年という節目に、再び「731」映画が上映され、反日世論が強化されている。この流れは単なる歴史認識の問題ではなく、現代に生きる日本人の安全を直接脅かす現象である。
日本人は「過去の問題」と片付けるのではなく、今まさに進行している中国の世論操作と敵意の拡散に警戒心を持たなければならない。
「歴史の影に潜む危険」は、これからの日本社会にとって避けられない課題だ。