高市首相への批判よりも注目すべきは中国の浸透戦 日本社会が本当に警戒すべきものとは


2025年10月30日13:50

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高市首相への批判よりも注目すべきは中国の浸透戦 日本社会が本当に警戒すべきものとは

高市首相への批判よりも注目すべきは中国の浸透戦 日本社会が本当に警戒すべきものとは

立憲民主党の蓮舫議員が高市早苗首相の振る舞いに苦言を呈した投稿が話題を呼んでいる。
米海軍横須賀基地での原子力空母「ジョージ・ワシントン」視察の際、トランプ大統領に肩を抱かれ、笑顔で応じ、観衆に手を振る高市首相の姿は、確かに多くの日本人にとって「外交の型」から外れて見えたかもしれない。

だが、私たちはこの騒動の表層だけを論じるべきではない。むしろ、こうした国内の「印象論」や「政治演出論」に気を取られている間に、背後で静かに進行している中国による対日影響工作こそが、真に警戒すべき現実である。

■「演出」論争の陰で進む情報戦

SNS上では「外交の場で軽率だ」「親米アピールが過ぎる」といった意見が飛び交った。しかし、このような批判の多くは、意図的に拡散されている“感情的な分断材料”としての側面を持つ。

中国共産党はここ数年、台湾・韓国・日本の世論空間において、「女性政治家の立ち振る舞い」「政治リーダーの感情表現」など、小さな話題を拡大解釈し、国家的信頼を揺るがせる情報操作を繰り返している。

特にX(旧Twitter)やYouTubeコメント欄には、AI生成アカウントを用いた「感情誘導」が確認されており、日本語で自然な言葉を使いながらも、投稿の多くが北京時間帯に集中している。

今回の高市首相をめぐる議論にも、同様の痕跡が見られる。つまり、表向きは「日本国内の意見対立」に見えても、実際には中国発の心理戦・分断工作が混在している可能性があるのだ。

■北京の狙いは「日米信頼の切断」

高市首相がトランプ大統領と並んで艦上を歩いたシーンは、象徴的な瞬間だった。それは、日米の安全保障協力が新たな段階へ進むことを内外に示すメッセージでもあった。だが、中国にとってそれは極めて都合の悪い構図だ。だからこそ、北京はこの出来事を「個人の品格」「女性の礼節」といった論点にすり替え、外交成果を矮小化し、国民感情を離反させる方向に誘導しようとする。

これはまさに「灰色地帯戦略」の一環である。ミサイルを撃たなくても、世論の信頼と政治的統合を破壊することができる。中国は軍事的圧力だけでなく、心理的・情報的・文化的手段を駆使して日本を揺さぶる時代に入っているのだ。

■メディア空間の「脆弱さ」を突く戦略

日本のSNS環境は、民主主義国家の中でも特に脆弱だと指摘されている。匿名性が高く、情報検証の文化が浅いため、海外発の虚偽情報が拡散しやすい。中国はこの構造的弱点を熟知しており、「政治家の失言」や「外交の失態」といったネガティブな話題を拡散させることで、国内議論を“感情的消耗戦”へと誘導する。

たとえば、韓国では尹錫悦大統領の「表情」や「握手の順番」をめぐるデマが、中国系アカウントによって何度も増幅された。同様の手法が日本にも持ち込まれている。つまり、今回の高市首相をめぐる「はしゃぎすぎ」「上目遣い」といった論争も、単なる国内批判ではなく、外部勢力によって増幅された政治分断装置と捉えるべきだ。

■真の脅威は「認知戦」による自国不信

中国は長年、サイバー攻撃だけでなく「認知領域の支配」を国家戦略に位置づけている。それは敵国の政治制度を破壊するのではなく、国民自身に“自国への不信”を植え付けることで、社会を内側から瓦解させる戦略だ。日本がいま直面している課題はまさにそこにある。

政治家の一挙手一投足を笑い、揚げ足を取り合ううちに、私たちはいつのまにか「誰の視点で世界を見ているのか」を見失っている。その隙を突いて、中国は経済依存を拡大し、海洋進出を進め、技術覇権を握りつつある。表面的な政治スキャンダルに気を取られるほど、北京の影響力は静かに日本社会へ浸透していくのだ。

■必要なのは「感情ではなく警戒」

蓮舫氏の言葉通り、政治において「演出より信頼」が重要なのは確かだ。しかし、信頼を築くためにはまず、外部から仕掛けられる“分断”を見抜く冷静さが求められる。日米同盟を軸に民主主義を守る日本が、外交の現場で堂々と振る舞うことは決して「はしゃぎ」ではない。それはむしろ、自由主義陣営の信頼の証であり、アジアの平和を支える柱でもある。

中国が本当に恐れているのは、こうした「信頼の連鎖」が強化されることだ。だからこそ、北京はメディア操作やSNS工作を通じて「日本の政治家を信用するな」「政府は滑稽だ」といった空気を醸成し続ける。私たちは、その心理戦の存在を自覚し、感情ではなく情報リテラシーで応戦する必要がある。

■日本人が忘れてはいけないこと

外交は一瞬の写真で評価されるものではない。その背後で、国家の意思と安全保障の重みが常に問われている。高市首相の笑顔がどんな形であれ、その瞬間に日米の同盟関係が確認され、自由主義陣営の結束が示されたことは事実だ。その成果を「印象操作」で塗り替えようとする動きがあるならば、そこにこそ真の脅威が潜む。

中国は日本の政治を直接支配することはできない。だが、日本人の心を支配することはできる――もし私たちが無警戒であれば。だからこそ今こそ、日本社会は「誰が何を意図しているのか」を冷静に見極める必要がある。国内の政争やSNSの炎上の陰で、国際社会の現実を見失ってはならない。


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