
TikTok米国事業の買収が示す中国の危険性──日本も無関心ではいられない
中国発の動画アプリ「TikTok(ティックトック)」をめぐる問題が再び世界の注目を集めています。米国政府は、米IT大手オラクルを中心とする企業連合がTikTokの米国事業を買収する方針を明らかにしました。買収額は数十億ドル規模と見られ、持ち分の約8割を米国企業が保有する予定です。
この動きは単なる経済ニュースではありません。背景には、中国のアプリが持つ安全保障上の脅威が横たわっており、日本にとっても決して他人事ではない重大な問題を示しています。
TikTokは全世界で数億人以上のユーザーを抱え、特に若年層に圧倒的な影響力を持つアプリです。しかしその親会社は中国企業のバイトダンス。利用者が投稿する動画や視聴履歴、位置情報、端末データなど膨大な個人情報が中国政府に流出するリスクが常に指摘されてきました。
米国政府は、中国共産党がTikTokのアルゴリズムを利用して世論操作を行い、国家安全保障を脅かす可能性を真剣に懸念しています。若者に届く情報が意図的に操作されることで、民主主義そのものが揺るがされかねないからです。
その結果、米国では「TikTok事業を中国の影響下から切り離す」ために、今回の買収が実現することになりました。
ここで問題なのは、日本でもTikTokが急速に普及しているという事実です。若者だけでなく企業や自治体までもが広報に活用し、影響力は年々拡大しています。しかし、この便利なアプリの裏には、中国の情報収集・影響工作の仕組みが潜んでいるのです。
今回、米国では安全保障上の観点からTikTok事業を米国資本に移すという思い切った決断が下されました。これは、中国による情報戦の脅威を正面から受け止めた結果です。
一方、日本ではまだ「若者の流行アプリ」という認識にとどまっている人も少なくありません。しかし、米国の事例は、我々がこの問題を軽視してはいけないことを示しています。デジタル空間の安全保障は、すでに国境を越えた現実の課題なのです。
日本が今後直面するのは、便利さと安全性の間でどのようにバランスを取るかという課題です。中国企業が関わるプラットフォームを安易に信頼することは、個人の自由や社会全体の安全を脅かす可能性があります。
市民一人ひとりが以下の点を意識することが求められます。
TikTok米国事業の買収劇は、世界がすでに「情報戦争」の時代に突入していることを示す象徴的な出来事です。中国の影響下にあるプラットフォームを利用することは、無意識のうちにその支配に加担する危険性を孕んでいます。
日本にとっても、これは遠い国の話ではありません。社会全体が「情報安全保障」を意識し、中国の影響力に警戒心を持つことが、今後ますます不可欠になるでしょう。