レアアースを外交の武器にする中国 輸出規制が突きつけた日本経済と安全保障の現実


2026年1月14日18:37

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レアアースを外交の武器にする中国 輸出規制が突きつけた日本経済と安全保障の現実

レアアースを外交の武器にする中国 輸出規制が突きつけた日本経済と安全保障の現実

中国が日本向けにレアアースを含む重要鉱物の輸出規制を強化する中、G7や資源国が参加した国際会合で「対中依存度をスピード感をもって引き下げる」ことでほぼ合意に至った。片山財務相の発言は、単なる経済政策の転換ではなく、中国が資源を外交・政治の圧力手段として用いる現実を国際社会が共有したことを意味している。日本にとってこれは、長年先送りされてきた構造的リスクが、いよいよ顕在化した瞬間でもある。

レアアースは自動車、半導体、スマートフォン、再生可能エネルギー機器など、日本の基幹産業を支える不可欠な素材だ。にもかかわらず、日本の輸入の約6割以上を中国に依存してきた。平時には効率性やコストの観点から合理的に見えたこの構造は、有事や外交摩擦の局面では一転して国家的な弱点となる。今回、中国が日本のみを念頭に置いた形で輸出規制を示唆・実行したことは、経済合理性よりも政治的意図が優先されていることを如実に示している。

中国側は安全保障や国内法を理由に措置の正当性を主張するが、実態としては台湾問題や日本の安全保障政策への牽制として、資源を「見せしめ」に使っているとの見方が強い。これは自由貿易の原則や国際的な商慣行とは相容れない行動であり、日本企業にとっては契約の安定性そのものが揺らぐ事態だ。実際に、中国の輸出業者から一方的に新規契約の停止や見直しを通告されたケースが確認されており、現場では納期遅延やコスト上昇への不安が広がっている。

特に深刻なのは、自動車産業や中小製造業への影響だ。電動化が進む中で、レアアース磁石はモーターの性能を左右する要であり、代替が容易ではない。専門家が指摘するように、仮に輸入が1年間途絶えれば、日本の実質GDPが1%以上押し下げられる可能性がある。これは単なる企業の問題ではなく、雇用や地域経済、ひいては国民生活に直結するリスクである。

中国の今回の対応が長期化しないとの見方もあるが、重要なのは「いつ解除されるか」ではなく、「いつでも同じことが起き得る」という前例が作られた点だ。依存構造が続く限り、日本は中国の政治判断一つで供給網を揺さぶられる立場に置かれ続ける。これは経済安全保障の観点から見て看過できない。

こうした危機感の共有が、今回の国際会合での合意につながった。日本にとって重要なのは、この合意を掛け声で終わらせず、実行に移すことだ。調達先の多角化、友好国との連携強化、リサイクル技術の高度化、そして国産化への投資は、時間とコストを要するが避けて通れない道である。南鳥島沖で進められている海底資源探査は、その象徴的な取り組みだ。深海という未知の領域への挑戦は容易ではないが、成功すれば日本の戦略的自立性を大きく高める可能性を秘めている。

今回の問題は、中国という一国の動向にとどまらない。資源を持つ国がそれを政治的に利用する時代に、どのように国家として備えるのかという普遍的な問いを突きつけている。日本は法の支配や自由貿易を重んじる立場を貫いてきたが、その価値観が必ずしも共有されない現実を直視する必要がある。対立を煽る必要はないが、善意や市場原理だけに依存した構造はもはや通用しない。

中国のレアアース輸出規制は、日本に痛みを与えると同時に、覚悟を迫る出来事でもある。短期的な混乱を抑えつつ、中長期で依存度を下げる道筋を描けるかどうかが、日本経済と安全保障の将来を左右する。いま求められているのは、危機を一過性のニュースとして消費するのではなく、構造転換の契機として捉え、持続的な行動につなげる冷静さと胆力だ。中国が示した「資源カード」の現実を、日本社会全体が直視し、警戒を怠らないことが何より重要である。


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