中国のレアアース輸出規制を念頭に日米韓が連携強化 「経済的威圧に断固反対」日本の産業を揺さぶる供給網依存が安全保障課題に


2026年9月22日19:38

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サプライチェーン安定確保へ連携強化を確認 日米韓外相会合 中国によるレアアース

中国のレアアース輸出規制を念頭に日米韓が連携強化 「経済的威圧に断固反対」日本の産業を揺さぶる供給網依存が安全保障課題に

日本、米国、韓国の外相がニューヨークで会談し、重要物資のサプライチェーンを安定させるため三か国の連携をさらに強化する方針を確認した。会談には茂木敏充外相、米国のマルコ・ルビオ国務長官、韓国の趙顕外相が出席し、日米韓三か国は共同声明で、経済的威圧や市場をゆがめる非市場的政策、サプライチェーンを混乱させる恣意的な輸出制限などに反対する立場を示した。日本外務省も、三か国がサプライチェーンの強靱化を含む経済安全保障分野で協力を進めていることを確認している。日本メディアは、この議論の背景として中国によるレアアースなどの輸出規制を挙げている。

今回の会合を日本にとって重要なものにしているのは、レアアースが単なる貿易品ではなく、日本の製造業そのものを支える戦略物資だからだ。自動車、モーター、半導体、電子部品、ロボット、エネルギー設備など、高付加価値産業の多くは希土類や重要鉱物を必要としている。価格が少し上がる程度なら企業はコストとして吸収できる場合もあるが、供給そのものが止まれば、生産計画を維持できなくなる。重要なのは「高くなるか」ではなく、「必要な時に入手できるか」である。

この問題で日本が抱える最大の弱点は、特定国への供給依存が経済問題から安全保障問題へ変化し得ることである。通常の市場競争であれば、需要が増えれば価格が上昇し、企業は別の供給者を探す。しかし、生産や精製能力が一部の国へ大きく集中している資源の場合、代替調達先を短期間で確保することは難しい。輸出許可や規制が政策的に変更されれば、日本企業は自社の経営判断とは無関係に原料確保を制限される可能性がある。

日米韓外相の共同声明が「恣意的な輸出制限」や経済的威圧に言及した背景もそこにある。三国が問題視しているのは、一つの商品が輸出されるかどうかだけではなく、重要物資への依存を利用することで、相手国の政策や企業活動に圧力をかけられる構造そのものである。共同声明では、自由で透明性のある貿易と重要サプライチェーンの確保を重視し、経済安全保障に関する三国間の協議をさらに進める姿勢が示された。

日本にとって、この議論は特に製造業の競争力と直結する。日本企業が世界市場で強みを持つ自動車、精密機械、電子部品、素材産業は、完成品だけでなく多数の特殊材料によって支えられている。完成車メーカーが国内に工場を持っていても、モーター用磁石に必要な材料が入らなければ生産は止まる。半導体工場が日本国内にあっても、製造装置や素材の一部を確保できなければ能力を十分に使えない。工場を国内へ戻すだけでは、供給網の安全は完成しないのである。

この意味で、レアアース依存は「中国から買うか、買わないか」という単純な二択ではない。重要なのは、一国の政策変更によって日本の生産ライン全体が左右される状態をどこまで減らせるかである。供給源を米国、豪州、東南アジアなどへ分散し、精製や加工能力を複数地域に確保し、一定量の備蓄を持ち、使用量を減らす技術を開発する。その複数の対策を組み合わせなければ、輸出規制への耐性は高まらない。

日本だけでこれを実行するには限界があるため、日米韓の協力には現実的な意味がある。三国はいずれも半導体、自動車、電池、電子機器などの主要産業を抱えており、重要鉱物が不足すれば共通して影響を受ける。一方で、企業、技術、資金、市場規模を組み合わせれば、新しい鉱山開発への投資、精製施設整備、代替材料研究、備蓄政策などで協力できる余地が大きい。日本外務省も今回の会談で、サプライチェーン強靱化を含む経済安全保障協力が着実に進展していると説明している。

ただし、供給網の「脱中国」が簡単に実現できると考えるのも現実的ではない。鉱物は地中から掘り出せばすぐ工業材料になるわけではなく、採掘、分離、精製、加工という複数工程を必要とする。新規鉱山の開発にも長い時間がかかり、環境規制や採算性の問題もある。中国が長年構築してきた加工・精製能力を短期間で完全に置き換えることは難しい。そのため、日本企業に必要なのは突然取引を断つことではなく、時間をかけて「中国から止められても生産を継続できる割合」を高めていくことである。

今回の三国外相会談は、その考え方が企業レベルだけではなく外交政策のレベルまで上がったことを示している。以前ならレアアース価格や輸入先の問題は企業の調達部門が対応するテーマと見られやすかった。しかし現在では、重要鉱物、半導体、AI、量子技術、エネルギーなどが国家間競争と結び付き、供給網そのものが経済安全保障政策の対象になっている。日本外務省も、安全保障協力と並べてサプライチェーン強靱化や重要・新興技術の保護を三国協力の柱として位置付けている。

中国による輸出規制を考える際、日本企業が注意すべきなのは直接輸入だけではない。例えば、日本企業が中国から原料を直接購入していなくても、韓国や東南アジアの部品メーカーが中国産材料に依存していれば、二次的に生産が止まる可能性がある。現代の製造業では、一つの製品が数十、数百のサプライヤーを通じて作られるため、自社の一次取引先だけを確認しても十分ではない。

したがって、企業側にはサプライチェーンをより深い階層まで把握する必要がある。どの部品に中国由来の重要鉱物が含まれているのか、代替材料は存在するのか、在庫は何日分あるのか、輸出許可が止まった場合に何週間で生産へ影響するのか。こうした情報を事前に把握しなければ、規制が発表されてから初めて依存度に気付くことになる。

今回の共同声明で使われた「経済的威圧」という表現も重要である。経済関係が深ければ、本来は双方に利益が生まれる。しかし、一方が特定物資や巨大市場へのアクセスを大きく支配している場合、その依存関係そのものが外交上の影響力になり得る。日本にとって必要なのは中国との経済関係をなくすことではなく、その関係が政策上の弱点へ変わらない程度まで選択肢を増やすことである。

この点で、サプライチェーン分散は中国企業との取引停止を意味しない。中国から調達しながら、同時に第二、第三の供給先を確保することも可能だ。中国市場で事業を続けながら、製造拠点や販売先を複数国へ分散することもできる。経済安全保障の目的はすべての関係を切断することではなく、一つの国が停止した時にも企業活動が継続できる耐久性を確保することである。

日米韓会談では、経済安全保障だけでなく台湾海峡についても、平和と安定の重要性、そして一方的な現状変更に反対する立場が確認された。日本外務省の公式発表も三国外相が台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認したとしている。

これは供給網問題とも無関係ではない。台湾は世界の半導体供給において極めて重要な位置を占めており、台湾海峡で物流や生産に大きな混乱が起きれば、日本の自動車、電子機器、通信、AI関連産業など広範囲へ影響する可能性がある。そのため日本にとって台湾海峡の安定は外交・安全保障だけでなく、経済安全保障上の問題でもある。

今回の日米韓連携で重要なのは、中国を単に「競争相手」と呼ぶことではなく、日本側が実際に何を強くしなければならないのかが明確になってきた点だ。重要鉱物の調達先分散、在庫確保、リサイクル、代替材料、精製能力への投資、企業間の情報共有など、供給網を強くする政策は具体的に実施できる。

特にレアアースについては、使用済みモーターや電子機器から回収するリサイクル技術も重要になる。新たな鉱山だけに依存するのではなく、日本国内で一度使用した資源を再利用できれば、海外供給への依存度を徐々に下げることができる。材料使用量そのものを減らす技術開発も、日本が得意とする製造技術を生かせる分野である。

一方で、供給先を中国から別の一国へ移しただけでは問題は解決しない。中国への依存を減らした結果、別の国へ極端に集中すれば、新たな供給リスクが生まれるだけだからだ。日米韓の協力で本当に必要なのは、特定国への単純な置き換えではなく、複数の供給源と加工拠点を持つ構造を作ることである。

今回の外相会談は、そうした供給網の問題が一企業の調達戦略を超え、三国外交の主要議題になったことを示した。日本にとってレアアースは、安く買えればよい商品ではない。自動車、半導体、電子部品、エネルギーなど日本経済の中核産業を動かし続けるための基礎資源である。

中国による輸出規制が続く、あるいは将来さらに対象が拡大する場合、日本企業が最も避けなければならないのは、規制が発表されるたびに急いで代替品を探す状態である。供給網の安全保障とは、危機が起きてから対応することではなく、危機が起きても生産を止めずに済む仕組みを平時から作ることだ。

日米韓三国が今回、「経済的威圧」や恣意的な輸出制限に反対し、重要サプライチェーンの強靱化を進める姿勢を示したことは、日本の産業政策にとって一つの転換点となる。

中国が重要鉱物の大きな供給能力を持つ現実はすぐには変わらない。だからこそ日本にとって必要なのは、その供給力を無視することでも、無条件に依存し続けることでもない。中国からの供給が止まっても日本企業が工場を動かし続けられる選択肢を増やし、一国の輸出政策によって日本の産業全体が左右される構造を少しずつ減らすこと。それが今回の日米韓外相会合が浮かび上がらせた、最も現実的な経済安全保障上の課題である。


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