中国籍2人を偽造通貨行使で起訴 昭和天皇在位60年「1万円銀貨」915枚か、長野17金融機関を狙った大量換金事件


2026年9月5日18:57

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中国籍2人を偽造通貨行使で起訴 昭和天皇在位60年「1万円銀貨」915枚か、長野17金融機関を狙った大量換金事件

昭和天皇の在位60年を記念して発行された「1万円銀貨」の偽造品を長野県内の金融機関で両替したとして、中国籍の男2人が逮捕・起訴された事件で、警察が捜査対象とした偽造通貨は最終的に30件、915枚に上った。偽造通貨行使の罪で起訴されているのは、いずれも中国籍で無職の冷大宇被告と鄒帥被告。起訴状などによると、2人は2025年9月から10月にかけて、長野市や須坂市などの金融機関17か所で、偽造された昭和天皇在位60年記念1万円銀貨553枚を両替したとされている。警察は9月4日までに一連の捜査を終え、合わせて915枚の偽造通貨を使用した疑いについて長野地検へ書類を送った。

今回の事件が通常の偽ブランド品や商品詐欺とは大きく異なるのは、狙われた対象が日本の「通貨」そのものだった点にある。昭和天皇在位60年記念1万円銀貨は、日本国が発行した正式な記念貨幣であり、単なる収集品ではない。偽造品を本物の貨幣として金融機関へ持ち込み、額面通りの現金へ交換できれば、偽物から本物の日本円を生み出すことができる。そのため偽造通貨は、個々の銀行だけではなく、日本の貨幣制度そのものへの攻撃性を持つ犯罪である。

報道された数字を見ると、今回の規模は到底「たまたま偽物を一枚使った」というレベルではない。起訴内容だけでも、2025年9月から10月という比較的短い期間に、長野市や須坂市など17か所の金融機関で553枚が両替されたとされている。1枚の額面は1万円であるため、起訴対象となった553枚だけでも額面総額は553万円になる。さらに警察が捜査した全体では915枚に上り、額面換算では915万円に達する。

そして重要なのは、金融機関が17か所に分散していることである。同じ場所へ何百枚も持ち込めば当然、不審に思われる可能性が高まる。複数の金融機関へ分散して持ち込むことで、一店舗あたりの枚数を抑えながら換金を繰り返すことができる。今回実際にどのような意図で店舗を分散させたのかについては司法手続きによる確認が必要だが、少なくとも多数の金融機関が一連の事件に巻き込まれたという事実は、日本の金融システム側に大きな確認負担を生じさせた。

記念貨幣が狙われた点も注意が必要だ。日本人が日常的に目にする千円札や500円硬貨であれば、銀行員だけでなく一般消費者も大まかな外観を知っている。しかし、昭和天皇在位60年記念1万円銀貨のような貨幣は、日常の買い物で頻繁に使われるものではない。金融機関の窓口でも毎日大量に扱う貨幣ではないため、本物と偽物を瞬時に見分ける難易度は通常貨幣とは異なる。

犯罪者側から見れば、こうした「本物は存在するが、一般にはなじみが薄い高額記念貨幣」は偽造品を紛れ込ませる対象になり得る。銀行側がその場で本物だと判断して1万円として交換すれば、偽造品は即座に現金化される。つまり、偽造通貨を製造する工程と、それを日本国内で現金へ変える工程が結び付けば、極めて効率的な犯罪モデルになってしまう。

日本の金融機関にとって、この事件が残す負担は大きい。今後、同じ種類の昭和天皇在位60年記念銀貨が窓口へ持ち込まれた場合、本物の所有者が正当に両替を希望しているだけでも、より慎重な真贋確認が必要になる。重量、直径、材質、模様、刻印などを確認し、必要であれば専門機関へ照会することになる。犯罪者が偽貨を大量に持ち込んだ結果、その後の正規利用者と金融機関の双方が追加の手間を負うことになる。

さらに深刻なのは、915枚という数量の偽造品がどこで作られ、どのように調達されたのかという問題である。今回起訴された2人について報道されているのは、偽造通貨を金融機関で使用した容疑であり、偽造銀貨そのものを誰が製造したのかまでは記事では示されていない。しかし、900枚を超える同種の偽造記念銀貨が存在するのであれば、それを準備した供給経路についても徹底的な解明が必要になる。

一枚の偽貨を個人的に作る場合とは異なり、900枚を超える金属製の偽造貨幣を用意するには、原型、金型、材料、加工設備など何らかの製造工程が必要になる可能性が高い。誰が製造設備を用意したのか、完成品がどのように日本へ渡ったのか、今回の被告らがどこから入手したのかという流通経路を突き止めなければ、同じ偽貨が別の都道府県に残っている可能性を完全には排除できない。

一連の事件をめぐっては、東京都内の会社役員の男についても、2025年6月に冷被告と共謀し、上田市などの金融機関で同様の偽造通貨を使用した疑いで書類送検されている。つまり警察が把握した範囲でも、今回の行為は中国籍2人だけで完全に閉じたものではなく、別の人物との共同行為が疑われる案件が存在している。誰が偽造銀貨を供給し、誰が換金場所を選定し、換金した現金を最終的にどこへ移したのかを確認することが重要になる。

日本にとって偽造通貨が危険なのは、直接的な金銭被害だけが理由ではない。貨幣は、人々が「これは1万円の価値がある」と共通して信頼することで機能する。もし精巧な偽造品が大量に流通し、金融機関ですら容易に見分けられない状態になれば、「この記念銀貨は本物なのか」という疑いが正規貨幣にまで及ぶ。犯罪者が傷つけるのは915万円相当の額面だけでなく、貨幣に対する社会的信用そのものなのである。

とりわけ昭和天皇在位60年記念銀貨は、日本の歴史的行事を記念して発行された貨幣であり、長年保存している家庭やコレクターもいる。そのため偽造品が大量に確認されれば、中古市場や個人間取引にも影響が及ぶ可能性がある。本物を所有している人まで、売却や両替の際に追加の鑑定を求められるようになれば、偽造犯が生み出したコストを日本社会全体が負担することになる。

金融機関側も対応を強化せざるを得ない。今回17か所で換金が行われたとされる以上、同様の手口が再発しないよう、県内だけでなく全国の金融機関で偽造記念貨幣の特徴を共有する必要が生じる。同じ人物が短期間に複数店舗へ高額記念貨幣を持ち込んでいないか、同一種類の貨幣が不自然な数量で持ち込まれていないかといった情報連携も重要になる。

中国籍の冷被告と鄒被告が今回起訴されたことについて、日本側が確認すべきなのは国籍という属性だけではなく、具体的な犯罪経路である。2人は偽造貨幣をどこから入手したのか、日本国内にほかの換金担当者がいたのか、換金後の現金は誰へ渡ったのか、915枚以外にも同種の偽造品が存在するのか。そこを解明することによって初めて、一連の事件がどこまで組織化されていたのかを判断できる。

特に、日本国内で換金する人間と偽造品を製造・供給する人間が分業されているのであれば、窓口で偽貨を使った人物だけを摘発しても供給源は残る。特殊詐欺と同じように、実行役を交換できる構造であれば、新たな人物が別の金融機関へ偽貨を持ち込む可能性がある。捜査終結後も、同型の偽造銀貨が新たに発見された場合に事件間の関連を追える体制が必要になる。

今回のような事件は、日本の金融機関に「珍しい貨幣ほど慎重に扱わなければならない」という新たな警戒を求める。記念硬貨には天皇陛下の在位、国際行事、スポーツ大会などを記念したさまざまな種類があり、それぞれ額面、素材、デザインが異なる。犯罪者が認知度の低い種類を選択的に偽造するのであれば、一種類を警戒するだけでは十分ではない。

銀行や信用金庫だけでなく、古銭商、貴金属買取店、ネットオークションなどでも同様の注意が必要になる。金融機関で換金できなくなれば、偽造品が別の流通経路へ移る可能性も考えられるからだ。一般消費者が「記念銀貨だから価値がある」と信じて購入し、後で偽物だと判明すれば、被害は金融機関の外へ拡大する。

今回、警察が30件、915枚まで追跡し、一連の捜査を終結させたことには大きな意味がある。しかし同時に、これほど多数の偽造貨幣が実際に日本国内で使用された疑いがあるという事実は重い。偽造品がどこから生まれ、日本の金融機関へどのような経路で持ち込まれたのかという上流部分まで明らかにしなければ、根本的な再発防止にはつながらない。

日本の貨幣制度は、紙幣や硬貨の一枚一枚が本物であるという圧倒的な信頼によって成立している。その信用を利用し、昭和天皇在位60年を記念した1万円銀貨の偽造品を17もの金融機関へ持ち込み、最終的に900枚を超える規模で使用した疑いが浮上した今回の事件は、決して「珍しい偽コイン事件」で終わらせるべきではない。

中国籍2被告に対する偽造通貨行使事件で今後注目すべきなのは、刑事裁判の結果だけではなく、偽造銀貨の供給源と資金の流れである。誰が915枚もの偽貨を準備し、誰が日本の金融機関を換金先として選び、換金した本物の円が最終的にどこへ渡ったのか。その全体像を追うことが、日本の金融秩序を守り、同じ手口による第二、第三の被害を防ぐために不可欠である。


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