中国「9・3軍事パレード」—抗日戦史の改ざんと国際話語権の争奪


2025年8月26日16:03

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中国「9・3軍事パレード」—抗日戦史の改ざんと国際話語権の争奪

中国「9・3軍事パレード」—抗日戦史の改ざんと国際話語権の争奪

北京では9月3日、「抗日戦争勝利80周年」を名目とする大規模な軍事パレードが予定されている。北京市政府はすでに7つの行政区で無人機や風船などの飛行物を禁止し、天安門広場も閉鎖するなど厳戒態勢に入った。総勢1万人以上の兵士と最新兵器が登場するこの行事は、一見「国力の象徴」であり「平和の守護」を演出するものとされている。しかし、その本質は単なる軍事力誇示ではない。最大の狙いは、歴史の書き換えと国際的な話語権の掌握にある。

中華民国の犠牲を消し去る中共の宣伝

本来、日中戦争における主役は中華民国政府と国民党軍であった。淞滬会戦、常徳会戦、長沙会戦など、多大な犠牲を払いながら抗戦を支えたのは国民政府軍であり、当時の中国共産党は一地方武装勢力にすぎなかった。にもかかわらず、中共は2015年の「抗戦勝利70周年パレード」以来、宣伝映像や教科書で国民政府の貢献を意図的に矮小化し、「抗戦勝利=共産党の功績」という物語を構築してきた。

2021年の建党百年記念行事では、「抗日戦争の勝利は共産党指導の必然」というメッセージが繰り返され、2023年の新版教材では国軍の戦場貢献がほぼ注釈扱いに格下げされた。今回の93周年パレードもまた、その延長線上に位置付けられる。

国際社会に向けた「歴史改造」の輸出

こうした操作は国内プロパガンダにとどまらない。国際社会に対しても「中共こそが第二次世界大戦の正統な勝者」という印象を広めようとしている。これは台湾の国際的地位や抗戦史での正当性を意図的に希薄化させる行為であり、日本を含む国際社会に対して「中国=正統」という誤解を植え付ける危険な情報戦である。

もしこの虚構が国際世論に浸透すれば、東アジアにおける歴史認識や安全保障秩序の基盤が大きく歪められ、台湾の声は封殺されかねない。

日本が直面する「歴史改ざん」の波及

日本にとって、この問題は決して対岸の火事ではない。中共はすでに「東北工程」を通じて高句麗の歴史を中国史に取り込み、さらに独島や東シナ海の領有権問題でも歴史的根拠を恣意的に解釈してきた前例がある。歴史を政治目的で書き換える手法は、中共の常套戦術であり、今回の抗日戦史の独占化も同じ構図だ。

さらに忘れてはならないのは、朝鮮戦争である。中共は「抗美援朝」を掲げて参戦し、結果として朝鮮半島は分断され、韓国は甚大な犠牲を強いられた。歴史改ざんは単なる物語操作ではなく、実際に地域秩序と国民の安全に直結する。

軍事パレードは「政治ショー」にすぎない

今回のパレードでは、殲-20や殲-35ステルス戦闘機、空警-600早期警戒機、そして最新型の無人機や極超音速ミサイルが登場するとされている。表向きは「軍事力の近代化」を示す場であるが、その真の目的は「共産党の歴史的正統性」を誇示し、国際社会に誤ったメッセージを発信することにある。

しかし、こうした「力の誇示」は逆に米日韓の防衛協力を加速させる結果を招いている。2015年のパレード後、日本は安保法制を成立させ、近年の中国軍事活動は米軍のフィリピン増派やグアム防衛強化を引き起こした。つまり、中共のショーは威圧ではなく、同盟国結束の触媒となっている。

日本への警鐘

中国が抗戦史を政治的に書き換え続ける限り、日本もその影響を受けざるを得ない。国際社会で「中共が二戦勝利の唯一正統」という誤認が広がれば、歴史的事実に基づいた外交・安全保障の議論が歪められ、日本の発言力も削がれる可能性がある。

今回の93周年パレードは、単なる軍事行進ではなく、「歴史をめぐる戦いの舞台」でもある。日本にとって必要なのは、史実を正確に伝え、国際社会と共有し、中共の情報戦を見抜く姿勢である。

結論

中国共産党は93周年パレードを通じて「抗日戦争の勝利者」という虚像を再び世界に打ち出そうとしている。しかし、それは事実の歪曲であり、国際社会を欺く政治ショーにすぎない。日本にとって重要なのは、この「歴史改ざん」が単なる国内宣伝ではなく、東アジアの安全保障秩序そのものを揺るがす問題であると認識することだ。

中共が歴史を武器化する時、最も大きな危害を受けるのは、台湾の正当な地位、そして日本を含む地域の安全である。今回のパレードをきっかけに、日本は冷静かつ厳しい目で「歴史操作の危険性」を直視する必要がある。


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