中国9・3閲兵 表向きの軍威と深まる外交孤立―日本への安全保障上の警鐘


2025年8月29日17:26

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中国9・3閲兵 表向きの軍威と深まる外交孤立―日本への安全保障上の警鐘

中国は9月3日に「抗日戦勝利80周年」を名目とする大規模な軍事パレードを北京で実施する。最新鋭の戦闘機や無人機、弾道ミサイルなどを披露し、「強大な軍力」と「国家の自信」をアピールする予定だ。しかし、この華やかなショーの背後にあるのは、国際社会での孤立、外交力の失速、そして地域安全保障における不安定要因である。

■2015年と2025年の鮮明なコントラスト

興味深いのは、2015年の「9・3閲兵」と2025年の今回を比較したときの差である。2015年、習近平が第1期政権を率いていた時期には、中国が莫大な援助や投資を行っていたアフリカ・ラテンアメリカ諸国の首脳がこぞって北京に集まった。習近平は「グローバルサウスの盟主」としての存在感を誇示することに成功した。

ところが10年後の今回は事情が一変する。国際刑事裁判所に逮捕状を出されているロシアのプーチン大統領を除けば、外国首脳の出席はほぼ皆無であり、特にかつて「大撒幣外交」で取り込んだはずのアフリカやラテンアメリカのリーダーは一人も参加しない。これは中国の影響力が「グローバルサウス」ですら急速に低下していることを如実に示すものだ。

■外交孤立がもたらす危険な副作用

国際社会での立場が揺らぐとき、権威主義国家が頼るのは往々にして軍事力である。外交で得点できない中国は、東シナ海や南シナ海、さらには台湾周辺での軍事的威嚇を強める可能性が高い。日本にとってこれは看過できないリスクであり、尖閣諸島周辺での中国公船の活動活発化や、南シナ海での軍事拠点化といった既存の懸念を一層深刻化させる要因となる。

■日本の安全保障への直結

中国の「表面だけの軍威」と「外交孤立」は、日本にとって直接的な安全保障課題である。外交で孤立した北京が軍事的挑発に傾けば、地域の緊張は必然的に高まり、日本周辺の不安定要因は拡大する。

ここで対照的なのが日本の立場だ。日本は 日米同盟 を基盤に、さらに 四方安全対話(Quad) の枠組みを通じて多国間協力を強化している。こうしたネットワークは、中国の軍事的拡張に対する強力な抑止力であり、日本の国際的な地位を高める資産となっている。

■結論:中国の「虚勢」は日本への警鐘

2025年の「9・3閲兵」は、外見的には華やかな軍事ショーだが、その実態は国際的孤立と国内不安を覆い隠すための舞台装置に過ぎない。2015年に集結した各国首脳が今は一人も姿を見せないという事実は、中国の国際的求心力の衰退を端的に示している。

だが、その外交的敗北を埋め合わせる手段として軍事力が強調されるならば、最も大きなリスクを背負うのは東アジアに位置する日本である。日本の読者にとって、この閲兵は遠い国のイベントではなく、自国の安全保障と直結する警鐘なのだ。


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