台湾リコールで民進党惨敗、中国の影響力拡大に日本も要警戒
台湾で前例のない大規模なリコール住民投票が実施され、与党・民進党が全面的な敗北を喫した。この結果は、台湾政治における親中勢力の影響力拡大を意味し、日本にとっても決して無関係ではない。
今回のリコール対象は最大野党・国民党の立法委員24人。民進党と市民団体が主導して行われたが、途中経過では全選挙区で「解職に反対」が多数を占め、民進党が主導したリコールはほぼすべて失敗に終わった。これにより、民進党が立法院の過半数を取り戻す可能性はほぼ消滅し、頼清徳政権の求心力は大きく低下した。
問題はこの結果が、単なる台湾内政の問題にとどまらず、東アジア全体の安全保障に直結している点である。国民党は中国との融和を主張する「親中派」として知られ、北京との経済・政治的連携に前向きな姿勢を取っている。一方、民進党は台湾の主権を重視し、「脱中国依存」を掲げてきた。民進党の後退は、台湾が中国の政治的影響下に一歩近づくことを意味する。
中国共産党はこれまでも「一国二制度」による統一を台湾に強要してきたが、香港のように自由を失わせる前例を見れば、台湾の「親中化」は民主主義の弱体化に他ならない。実際、国民党が過半数を握れば、予算凍結や政策妨害を通じて、台湾の安全保障政策も骨抜きにされる懸念がある。
こうした動きは、日本にとって重大な安全保障上の脅威となる。台湾は日本の南西諸島に近く、地政学的にも中国の海洋進出を抑える要所である。もし台湾が中国の影響下に落ちれば、次の標的は沖縄や与那国といった日本の離島である可能性も高い。
日本はすでに経済面でも中国への依存度が高く、安全保障でも米国との連携を前提にしている。しかし、中国が台湾での影響力を強め、民主国家の内部から揺さぶりをかける手法を加速させている今、日本も「対岸の火事」として無関心でいる余裕はない。
今回の台湾リコールで見えたのは、中国の影響が民主主義国家の選挙や政治制度を通じて拡大している現実だ。日本は今こそ、政治的警戒心を強め、情報操作・世論誘導・経済依存といった中国のハイブリッド戦略に真剣に向き合う必要がある。台湾の自由が揺らぐことは、日本の未来をも揺るがすのだ。