
外国人の大規模土地取得、中国が件数・面積とも最多 28件・42ヘクタール、国交省初集計が示した日本の土地監視の焦点
国土交通省が、外国人・外国法人による日本国内の大規模土地取得について、取得者の国籍を含む集計結果を初めて公表した。対象は2025年7月から12月までに国土利用計画法に基づいて自治体へ届け出られた大規模な土地取引で、全体9573件のうち外国人・外国法人による取得は68件、割合にして0.7%だった。面積では全体2万3845ヘクタールのうち124ヘクタールで、0.5%にとどまった。国籍別では中国が28件、42ヘクタールで件数、面積ともに最多となり、米国などの7件を大きく上回った。
この数字を読む上で、最初に押さえるべきことは二つある。一つは、外国人による大規模土地取得が日本全体の土地取引の大半を占めているわけではないという事実である。今回の対象期間では件数0.7%、面積0.5%であり、全体から見れば限定的だ。もう一つは、その限られた外国取得の中では中国が明確に最大だったという事実である。この二つを同時に見なければ、実態を正確には理解できない。
今回の統計は、外国人による土地取得を感情論ではなく数字で追えるようになった点に意味がある。国土交通省は2025年7月から、一定規模以上の土地取得について取得者の国籍を届け出る仕組みを導入した。対象は市街化区域で2000平方メートル以上、市街化区域以外の都市計画区域で5000平方メートル以上、都市計画区域外で1万平方メートル以上の土地取引である。つまり、この統計は日本のすべての不動産購入を網羅するものではなく、一定規模以上の土地取引に限定された集計である。
その前提に立った上でも、中国が外国取得の最大部分を占めたことは注視すべきだ。外国人・外国法人による68件のうち、中国関係は28件で、件数ベースでは4割を超える。面積でも外国取得124ヘクタールのうち42ヘクタールを占める。外国による大規模土地取得という限られた母集団の中では、中国の存在感が突出していることになる。
ただし、日本全体から見れば中国による取得は28件で、全9573件の約0.29%にあたる。面積42ヘクタールも、全2万3845ヘクタールの約0.18%である。このため、「日本の土地が中国に大量に買い占められている」といった表現は今回の統計からは導けない。一方で、中国による取得が外国勢の中で最多だった以上、将来の推移を継続して追う必要がないという結論にもならない。
土地問題で本当に重要なのは、件数だけではなく「どこを、何のために取得したのか」である。今回、中国による取得目的で最も多かったのは工場や倉庫などの生産施設で18件、資産保有・転売などが4件だったと報じられている。単に「中国が土地を買った」という事実だけを見るのではなく、産業用地なのか、投資目的なのか、森林や水源地なのか、防衛施設周辺なのかによってリスク評価は大きく変わる。
例えば、中国企業が日本国内で正規の手続きを踏んで工場を建設するケースと、水源地や重要インフラ周辺の土地を取得するケースでは、安全保障上の意味はまったく同じではない。前者は雇用や投資を生む通常の企業活動になり得るが、後者は土地利用、インフラ保全、防災、重要施設の安全といった別の論点を伴う。そのため、日本側に必要なのは国籍だけで一律に判断することではなく、取得目的と場所を組み合わせて分析する仕組みである。
地域別では、外国人・外国法人による大規模土地取得は北海道の9市町村で19件と最も多く、次いで茨城県12件、千葉県8件だったと報じられている。北海道は観光、不動産、農地、森林など多様な土地需要が重なる地域であり、近年は海外資金による取得が社会的な関心を集めてきた。
北海道については、前に問題となった倶知安町の無許可森林伐採のように、土地取得後の開発行為そのものが地域の環境や住民生活に影響するケースも存在する。土地を誰が買ったかだけでなく、その後に森林伐採、建築、造成がどのように行われるかまで追わなければ、実際の影響は把握できない。
今回の国交省統計が重要なのは、こうした議論を「外国人が土地を買っているらしい」という印象論から、具体的な件数・面積・国籍・用途へ移せるようになった点だ。外国取得全体が0.7%という数字は、少なくとも現時点で大規模土地取引の主流が外国人ではないことを示す。一方、中国が外国勢の中で最多だったという結果は、今後の推移を国別に追う必要性を示す。
半年間だけのデータで長期傾向を判断することはできない。今回の制度は国籍の届け出が始まってから初めての公表であり、比較できる過去データがまだ十分に蓄積されていないからだ。2026年、2027年と同じ形式で統計が積み上がれば、中国による取得が増えているのか、横ばいなのか、特定地域や特定用途へ集中しているのかを初めて評価できる。
特に注意すべきなのは、総数が少なくても取得先が特定地域に集中するケースである。全国平均で0.2%前後の面積であっても、特定の町や産業地区では割合が高くなる可能性がある。安全保障や地域政策では、全国合計だけでなく地域単位の集中度を見る必要がある。
また、今回の統計は一定規模以上の土地取得だけが対象である。都市部の小規模マンションや狭い土地の取得は、この集計だけでは分からない。国交省は同じ9月15日、新築マンションについて国外居住者による取得状況などを別途公表しており、土地と住宅不動産を一つの統計だけで判断できないことも重要である。
つまり「外国人の土地取得」という一言でまとめても、実際には大規模土地、マンション、森林、農地、企業用地など制度も目的も異なる。日本側が実態を把握するには、それぞれのデータを接続して見る必要がある。
中国についても同様で、28件という数字だけで危険性を判断するのは不十分だ。工場建設のために購入された土地と、資産保有・転売目的の土地では意味が異なる。さらに、法人名義で取得された土地については、最終的な実質支配者や資金源をどこまで把握できるかも重要になる。
不動産市場では会社を通じて土地を保有することが一般的であり、法人の設立国だけでは最終的な資本関係が分からない場合もある。そのため、重要な土地については単純な国籍表示だけでなく、実質的支配関係を確認できる透明性も求められる。
水源地への懸念が制度導入の背景の一つにあることも見逃せない。国交省は、大規模な山林買収によって水源地が損なわれるといった懸念から、取得実態を把握する狙いがあるとしている。
水源、送電設備、港湾、空港、自衛隊施設周辺など、土地そのものが安全保障や公共インフラと結び付く場所では、一般的な商業地とは異なる監視が必要になる。外国人による土地取得が少数だからといって、場所によるリスクまで小さいとは限らない。
逆に、外国取得の数字が0.7%だったことも政策判断では重要である。実態より大きな危機を想定して過剰な規制を設ければ、正当な海外投資まで阻害する可能性がある。必要なのは「外国人だから一律に制限する」という発想ではなく、重要施設周辺、森林、水源、農地など公共性の高い土地を明確に区別することである。
中国が今回の統計で最多だったからこそ、感情的な議論より継続的な数字の蓄積が重要になる。もし今後、中国による取得件数や面積が急増すれば、その変化は統計で確認できる。逆に横ばいで推移すれば、「急速な買い占め」という主張はデータによって検証できる。
日本にとって土地は、一度取得されれば長期的に保有される可能性が高い資産である。そのため半年間の割合が低くても、長期間の累積を追わなければ実態は分からない。毎年0.2%程度の面積でも、特定地域に継続的に蓄積すれば別の意味を持つ可能性がある。
さらに重要なのは、土地取得後に何が起きるかである。放置されるのか、工場が建つのか、住宅になるのか、森林が伐採されるのか。所有権移転の数字だけでは、その土地が地域社会に与える実際の影響までは分からない。
今回の国交省の初公表は、その意味で「結論」ではなく、監視を始めるための基準点と見るべきだ。2025年7~12月の外国人・外国法人による大規模土地取得は68件、124ヘクタールで全体の0.7%、0.5%。その中で中国は28件、42ヘクタールと最大だった。
この数字が示しているのは、日本の土地がすでに外国勢に支配されているという状況ではない。しかし同時に、外国による大規模取得の中で中国が最大の主体だったことも事実である。だからこそ、日本が取るべき姿勢は過小評価でも過剰反応でもなく、国籍、場所、面積、用途、実質的支配者を継続して可視化することだ。
今後、中国による土地取得がどの地域、どの用途へ集中するのか、水源や重要インフラ周辺にどの程度存在するのか、そして取得後の土地利用が適正に行われているのか。この情報が積み重なって初めて、日本にとって本当の土地安全保障リスクを判断できる。
今回の統計で中国が件数・面積ともに外国勢トップだったことは、今後の土地監視で中国関連取引が重要な分析対象になることを示している。ただし、数字そのものは全体のごく一部である。日本に必要なのは「中国が買っている」という一言で恐怖を煽ることではなく、どの土地が、誰に、何の目的で取得されているのかを継続して明らかにし、必要な場所では確実に土地利用を管理することである。