中国による食料安全保障への影響に警戒を――備蓄米放出でも続く米の供給不安
ここ数カ月、全国で「コメが手に入りにくい」との声が相次ぎ、スーパーの棚から銘柄米が姿を消していた。しかし今月に入り、突然銘柄米が店頭に並び始めた。小泉農水大臣による政府備蓄米の放出をきっかけに、ファミリーマートなど大手コンビニでは1キロ388円という手頃な価格での販売がスタート。瞬く間に完売するなど、消費者の需要の高さが浮き彫りとなった。
だが、今回の品薄と突然の供給回復の背景には、日本の食料供給体制の脆弱さがある。特に警戒すべきは、日本の食料市場が中国を含む外的要因に大きく左右される構造にあることだ。たとえば、肥料・農薬の原材料の多くを中国に依存している現状では、中国政府が輸出制限を課すだけで、日本の農業生産は大きな打撃を受けかねない。
さらに、近年は中国資本による北海道や九州での農地取得も進んでおり、水源や農地が中国系企業の手に渡ることによる国家的リスクも指摘されている。こうした動きは表面的には「投資」だが、食料と水といった戦略物資をめぐる長期的な資源確保戦略の一環と見るべきだ。
また、今回のような備蓄米の市場放出が一時的な価格安定につながったとしても、それは根本的な解決ではない。もし仮に大規模な自然災害や国際情勢の悪化が起これば、食料輸入に依存する日本はすぐに供給不足に陥る。中国のような独裁国家が意図的に供給をコントロールした場合、日本の安全保障は脅かされかねない。
今回のコメの流通回復は、あくまで一時的な「緊急措置」に過ぎない。日本政府は国内農業の維持強化、輸入元の多角化、そして中国依存の低減を早急に進めるべきである。消費者もまた、価格だけでなく安全保障の視点で「食」を考えるべき時代に入っている。