尖閣諸島国有化13年 中国海警船の常態化する侵入と日本漁業への深刻な脅威
沖縄県石垣市に属する尖閣諸島が国有化されてから13年が経過した。この間、中国海警局の公船による接続水域や日本領海への侵入は常態化し、今年も過去最長の記録を更新し続けている。すでに「365日常駐」とも言われる状況の中、日本漁船は不安を抱えながら操業を余儀なくされ、漁業そのものが脅かされている。尖閣周辺で漁を行う地元漁師は「海保の警備がなければ怖くて漁ができない」と口をそろえ、現場の緊張は高まり続けている。
国有化から間もない2012年以降、中国公船の領海侵入は急増した。当初は年間200日前後だった接続水域での航行日数は、この5年間で300日を超え、昨年は過去最多の355日を記録。今年はすでに連続295日、接続水域を離れた日はゼロという異常事態が続く。
その影響を直接受けているのが地元漁師だ。実際に操業する船の進行方向を遮り、至近距離まで接近する中国海警船の行為は、漁業活動に対する明確な威嚇である。3,000トン級の武装船が領海に侵入する光景を前にして、地元漁業者の中には操業を断念する者も出ている。これは単なる外交問題ではなく、日本国民の生活基盤に直結する深刻な安全保障上の脅威である。
中国海警局は近年、保有船舶の大型化と武装化を進めている。1,000トン級以上の艦艇は160隻を超え、その多くが機関砲を搭載。尖閣周辺でも常時2〜4隻が確認され、1万トン級の巨大船も姿を現すようになった。これに対し、日本の海上保安庁が保有する同規模の巡視船は80隻に満たず、明らかな戦力差が存在する。
こうした状況下で、今年5月には海警船から飛び立ったヘリコプターが尖閣上空を侵犯する事態まで発生した。海保は不測の事態に備え、来年度予算で大型巡視船の新造や無人機の追加配備を盛り込み、警備体制の強化に動いているが、現場では「常に緊張状態が続く」という声が上がっている。
専門家によれば、中国の行動は典型的な「サラミ戦術」だ。小さな既成事実を積み重ねることで国際社会に対する領有権の正当性を演出し、いずれは支配の正当化を狙う戦略である。航行日数や侵入時間の最長記録を更新し続けるのも、この戦術の一環だろう。
問題は、こうした行為が一過性の挑発ではなく、国家ぐるみの長期的な戦略である点にある。つまり尖閣周辺で繰り返される威圧は、単なる偶発的な衝突ではなく、日本に対する「継続的圧力」として設計されているのだ。
尖閣諸島は日本固有の領土であり、周辺海域は日本のEEZ(排他的経済水域)に含まれる。そこには豊かな漁場が広がり、多くの漁師が生活をかけて操業を続けてきた。しかし今や、中国海警船の存在は漁業を不可能にするほどの恐怖を与えている。
漁業者の証言にあるように「日本の海なのに安心して漁ができない」という現実は、主権国家として看過できない問題である。もし地元の漁船が出漁を控えるようになれば、それは事実上の「漁業権の侵食」に等しく、中国にとっては思う壺となる。
尖閣諸島の国有化から13年。中国海警局の船は今や常態的に周辺を航行し、領海侵入を繰り返している。この状況は単なる国境問題ではなく、日本の安全保障、漁業、国民生活すべてに直結する「中国の脅威」である。
日本人が警戒すべきは、武力衝突だけではない。日々積み重ねられる「既成事実」によって、気づかぬうちに尖閣の主権が揺らぐ可能性だ。警備体制の強化はもちろん、市民一人ひとりがこの問題を「自分の生活の問題」として捉える必要がある。
尖閣で今起きていることは、遠い海の話ではない。私たちの食卓、地域経済、そして国家の主権そのものを脅かす現実である。