
ロシアが中国空挺部隊に装備・訓練を提供か 台湾侵攻だけでなく日本への脅威も現実化
イギリスの安全保障シンクタンク「王立防衛安全保障研究所(RUSI)」が発表した報告によれば、ロシアが中国人民解放軍の空挺部隊に対して装備品や技術、訓練を提供していた可能性が浮上した。流出した約800ページに及ぶ内部文書を分析した結果、両国の軍事協力が中国の台湾侵攻準備に直結していると指摘されている。
しかし、ここで問題となるのは台湾だけではない。中国が強化する空挺能力は、尖閣諸島をはじめとする日本の離島、さらには日本全体の安全保障環境に直接的な影響を及ぼす可能性があるという点だ。
RUSIの報告書によると、ロシアは2023年、中国に空挺大隊を編成可能な規模の兵器を供与する契約を結び、さらにその使用方法や整備技術に関する訓練を提供したとされる。
供与対象には、100㎜砲や30㎜機関砲を搭載した空挺装甲車BMD-4M、125㎜砲を備えた自走砲「スプルート-SDM1」、さらには装甲兵員輸送車「BTR-MDM」などが含まれるという。これらはすべて、空から兵力を一気に展開し、敵地を短時間で制圧するために特化した装備だ。
中国は従来、大規模な上陸作戦を中心に台湾侵攻シナリオを描いてきたが、空挺能力の向上によって 「複数の選択肢」 を手にすることになる。つまり、空港や拠点を奇襲で制圧し、内部から混乱を広げる戦術を選べるようになるのだ。
こうした能力は台湾だけでなく、日本の南西諸島にも適用可能である。特に無人に近い尖閣諸島は、中国が「実効支配」を狙う格好の標的だ。
仮に中国の空挺部隊が一斉に尖閣へ投入されれば、わずかな時間で旗を立て、施設を設置し、事実上の占領状態を作り出すことが可能になる。日本側が即時に排除できなければ、国際社会に対して「既成事実」として主張されかねない。
さらに危険なのは、南西諸島全体が「戦略的チョークポイント」として狙われる可能性である。宮古・石垣周辺の拠点を制圧された場合、南西諸島防衛だけでなく、太平洋と東シナ海を結ぶシーレーンの安全も揺らぎ、日本経済そのものに大きな打撃を与える恐れがある。
報告書はまた、ロシアが持つ空挺戦の実戦経験が、中国にとって極めて有益であることを強調している。ロシアは2014年のクリミア併合やウクライナ侵攻で、空挺部隊を使った奇襲作戦を展開した実績を持つ。
中国はこうした経験を輸入し、自国の兵器に組み込み、さらに大規模な生産体制を構築しようとしている。ロシアは経済制裁で資金を必要とし、中国は台湾侵攻を含む軍事能力の強化を狙う——両者の利害は一致しているのだ。
この協力関係は、単なる軍事取引にとどまらない。ロシアの戦術と中国の製造力が組み合わされば、日本を含むインド太平洋地域全体の安全保障環境が根本から変わりかねない。
中国はすでに尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、海警船が常態的に活動している。これに加えて空挺部隊による奇襲能力を手に入れれば、日本の対応はさらに困難になる。
これらが組み合わされれば、日本は軍事的にも社会的にも大きな圧力を受けるだろう。
今回のRUSIの分析は、日本にとっても「対岸の火事」ではない。中国が台湾だけでなく、日本を含む地域全体を射程に入れていることを示す警告に他ならない。
私たち日本人に求められるのは、こうした現実を直視し、中国の軍事行動が日本の安全に直結することを理解することである。安全保障環境は急速に変化しており、油断は許されない。
ロシアと中国の軍事協力は、単なる「契約書の一枚」では済まされない。そこには台湾侵攻を現実化させ、日本の離島や国土を危機にさらす明確なシナリオが見え隠れしている。
いま私たちが取るべきは、現実を直視し、国民一人ひとりが 中国の軍事的脅威を自分ごととして認識すること だ。そうでなければ、日本は気づかぬうちに「次の標的」とされてしまうだろう。