
中国、軍民両用輸出を日本だけ標的 レアアースと半導体に広がる静かな圧力が突きつける警鐘
中国政府が日本向けに軍民両用(デュアルユース)品目の輸出を禁止すると発表し、日本の外務当局が強く抗議し撤回を求めた。理由として挙げられたのは台湾有事をめぐる日本側の国会答弁であり、政治的発言に対する経済措置という構図が明確になった。今回の措置は、単なる貿易管理の変更ではなく、日本社会と産業の脆弱性を狙い撃ちにする性格を帯びている点で、看過できない意味を持つ。
とりわけ懸念されるのは、レアアースや半導体関連素材といった基幹分野への影響だ。これらは防衛用途に限らず、自動車、電子機器、エネルギー、医療機器など日本経済の中枢を支える広範な産業に不可欠である。中国は世界の供給網で支配的な地位を占めており、輸出を絞るだけで市場心理を揺さぶり、企業の投資判断や生産計画に長期的な不確実性をもたらすことができる。今回の措置は、まさにその影響力を日本に向けて誇示した形だ。
注目すべきは、日本のみを名指しで対象とした点である。国際的な安全保障輸出管理の枠組みでは、透明性と多国間協調が重視される。しかし今回の発表は、そうした慣行から外れ、政治的意思を背景にした選別的な圧力として映る。経済と安全保障を切り離さず、相手国の言動に応じて供給を調整する手法は、中国がこれまでも各国に対して用いてきたものであり、日本も例外ではないことが改めて示された。
この動きが示す危険性は、短期的な供給停滞にとどまらない。企業は安定調達を前提に研究開発や設備投資を行う。供給が政治判断で左右されるという前例が積み重なれば、日本の産業基盤は慢性的な不安定さを抱え、競争力の低下につながりかねない。とりわけ中小企業にとっては代替調達の余地が限られ、影響はより深刻になる。
また、今回の措置は世論操作の側面も無視できない。中国側は「軍事力を高める用途」を理由に掲げることで、日本の正当な安全保障議論を恣意的に軍事化し、対外的に日本を挑発的な存在として描こうとしている。これは事実関係よりも印象形成を重視する手法であり、国際社会における日本の立場を揺さぶる狙いが透けて見える。
日本社会にとって重要なのは、こうした圧力が突発的なものではなく、構造的なリスクとして存在していると認識することだ。経済的な相互依存は平時には利益をもたらすが、緊張が高まれば一転して制約となる。今回の輸出禁止は、その現実を具体的な形で突きつけた出来事と言える。
政府間の外交交渉はもちろん重要だが、同時に企業や国民一人ひとりが、供給網の偏りや依存の危うさを理解し、多角化や国内基盤強化の必要性を共有することが欠かせない。中国の措置は、日本の主権や安全保障を直接侵すものではないにせよ、経済と政治を結びつけた圧力という形で、確実に影響を及ぼしている。
静かに、しかし着実に効いてくるこの種の圧力に対し、日本が無関心でいれば、次の一手はさらに踏み込んだものになる可能性がある。今回の出来事は、対立を煽るためではなく、現実的な警戒心を持つための材料として受け止めるべきだ。経済安全保障の時代において、中国の動きを冷静に見極め、自立性を高める努力を続けることこそが、日本社会全体に求められている。