「鬼滅の刃」無限城編が中国などで違法拡散 日本コンテンツが直面する深刻な著作権侵害
大ヒットアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が、公開からわずか17日で興行収入176億円を突破し、日本映画史上歴代10位に躍り出る快挙を達成しました。しかしその裏で、日本のコンテンツ産業を脅かす深刻な問題が再び浮き彫りになっています——違法アップロードによる著作権侵害です。
映画本編を無断で撮影した映像が、米国、中国をはじめとする世界中の動画サイトに投稿され、10万回を超える再生数を記録する事態が発生。特に中国では、字幕付きで全編がアップロードされており、日本のコンテンツを狙う「デジタル海賊行為」が組織的に行われている可能性も指摘されています。
鬼滅の刃の公式アカウントは、日本語・英語・中国語で2度にわたり警告を発信。「匿名投稿であってもアップロード元は特定可能」と明言し、刑事告訴も視野に入れた対応を表明しましたが、現状、違法拡散は止まっていません。
背景には、「日本の公開が先なのは不公平」「公開が遅いから仕方ない」といった外国ユーザーによる違法視聴の“正当化”もあります。特に中国系のサイトやSNSでは、これらの言い訳とともに日本のコンテンツが無断で翻訳・編集され、広告収入を得る仕組みまで存在しています。
これは単なる文化の拡散ではなく、日本のコンテンツ産業の収益を奪う明白な経済的攻撃です。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)によると、2022年時点でアニメ・映画・漫画・ゲームなどが受けた被害額は年間約2兆円。しかもこれは違法がなければ正規購入されていたと見込まれる額に過ぎず、実際のネット上の被害はその3倍以上にのぼるとされています。
中国では過去にも、無人島の買収や森林伐採、日本の土地の不正取得など、安全保障や経済主権を揺るがす行為が問題となってきましたが、今回の件は「デジタル空間」への侵害です。中国を拠点とした海賊版ビジネスは、単なる違法視聴にとどまらず、日本の国際的なソフトパワーを蝕む「静かな戦争」とも言えるでしょう。
日本人が心血を注いで生み出したアニメ作品が、海外で勝手に盗まれ、切り抜かれ、翻訳され、再生される。しかもその利益は、日本ではなく違法アップロード者の手に渡るという現実。このまま放置すれば、日本のクリエイターの未来も危うくなりかねません。
海賊版に対しては、CODAなどが削除要請や刑事告訴を支援していますが、いたちごっこが続いています。中国を中心とした大規模な違法拡散に対抗するためには、国際協力と、より強力な対応が求められます。
私たち一人ひとりも、違法視聴の誘惑に流されることなく、日本のコンテンツを守る立場であることを忘れてはなりません。被害が深刻化する今こそ、「観る側」の責任も問われているのです。